3月24日に片頭痛治療に関するリモート開催のセミナーがありました。石川県の木島脳神経外科クリニックの木嶋先生から、片頭痛に対するCGRP関連製剤のリアルな有用性に関するお話がございました。当院でも昨年来、通常の予防薬では予防効果の薄い片頭痛の患者さんにCGRP関連製剤の外来での注射を行っておりますが、中には注射による予防効果が得られない患者さんがおられることも事実です。なぜ、CGRP関連製剤だけでは片頭痛を完全に抑え込むことができないのかを、当日のセミナーで発表させていただきました。要約しますと、抗CGRP抗体は脳内に到達する可能性は低く、もっぱら片頭痛のきっかけとなる三叉神経節での痛みの増幅をブロックしているということ(つまり中枢性感作が生じてしまった慢性化症例では効果が薄いと予想される)、またCGRP以外の神経伝達物質による片頭痛の機序には作用しないことなどが挙げられます。抗CGRP受容体抗体に関しては諸説あるのですが、CGRP受容体のみを選択的にブロックし、他の片頭痛に関わる受容体はブロックできないことが効果不十分につながっていると考えられます。片頭痛の患者さん毎に、どれだけCGRPがその人の片頭痛に関わっているかが分かれば、CGRP関連製剤の適応基準もより明確になると思うのですが、そこはまだまだ先の話です。私見では、月に頭痛が15日以上の慢性片頭痛の患者さんより15日未満の反復性片頭痛の患者さんの方が、また比較的御高齢でCGRPそのものが減少していると思われる患者さんの方がCGRP関連製剤が効きやすい印象を持っています。さらに経験を積み増して、また新たな知見も取り入れて、皆様により良い治療法を選択していただけるよう努力していきたいと思います。