しびれ専門外来

しびれ専門外来について

「しびれ」それは患者さん本人しかわからないもの。しかもその様態は千差万別です。正座した時に足がしびれる感じから、それこそお箸が持てない状態(脳卒中の可能性大)をしびれと感じている場合もあります。このように、その原因も脳に由来するものから、頚椎・腰椎疾患によるしびれ、糖尿病に伴う末梢神経障害によるしびれ等々多種にわたります。ですから脳から末梢神経までをみれる専門医が、患者さんの訴えに耳を傾け丁寧に診察を行い、原因となる疾患を探っていくことがしびれ治療には大切です。

脳が原因のしびれ

代表的なものに脳梗塞などの脳卒中があります。ある日、ある時から出現したしびれで、片側の顔面、腕、足などにもしびれが及んでいる場合、脳卒中の疑いが強くなります。意識障害や、運動麻痺を伴っている場合にはさらに脳卒中の可能性を疑います。その場合には救急対応可能な医療機関を一刻も早く受診していただき、血栓溶解療法の対象であればその治療を受けることで後遺症の可能性を減らすことが可能になります。しかしながら脳血管障害はそれまで普段となんら変わらぬ日常生活を送っていたのに、前触れもなく発症し、前述の的確な治療が受けられないと重篤な事態を招きかねない恐ろしい病気です。ですから精度の高い脳ドック検査による早期発見と生活習慣の見直しなどによる予防対策も極めて重要であるといえます。特に生活習慣病を指摘されている中高年の方は、早めに脳ドッグ等の検査を受けておくことをお勧めいたします。自分の脳の状態を把握し、それに対して早めに手を打っておくことが脳卒中予防の要となります。

変形性頚椎症

4,50歳台になると、加齢に伴い頚椎と頚椎の間のクッション、すなわち椎間板が次第に水分を失い脆くなり、柔軟性を欠いてきます。そうなりますと椎間板の上下の頚椎にも影響が及び、辺縁の骨が棘のように(骨棘)出っ張ってきます。脆くなった椎間板とともに骨棘が脊髄(神経の幹)から枝分かれしていく神経根を圧迫し、肩や腕に痛みを生じたり、手先にしびれを生じてきます。悪化すると物を上手くつかめない、お箸が使えない、字が書きづらい、ボタンがはめられないといった症状が進行することがあります。圧迫が神経の「幹」の部分に及ぶと、歩行で躓く、上手く歩けないといった脊髄障害が出現します。一般的には手足のしびれ感で見つかることが多く、早期の段階で頚椎レントゲン検査・頚椎MRI等で診断をつけ治療につなげていくことが大切です。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板の老化現象は、実は20歳台ぐらいから始まっているといわれています。多くの患者さんをみていると10歳台で椎間板ヘルニアを発症する方もいます。一般的には、まさに働き盛りの方で、高度の腰痛と、片側の臀部から膝下から足先までしびれてしまって寝ることもままならないといった症状が典型的です。高度の症状の方は、診察室で診察しようにもベッドに横になることが出来ず、座ることも大変なので、立ったまま診察をさせていただくこともあります。椎間板の老化現象と、椎間板に加わる外力が相まって、椎間板が後ろ側に飛び出し、下肢を支配する「坐骨神経」にぶつかることが原因です。この状態は腰椎MRI検査で診断可能です。椎間板の突出で圧迫された「坐骨神経」はみるみる腫れあがり、まさに「ミミズ腫れ」の状態になり、高度の腰痛と下肢痛が出現するわけです。ところが抗炎症薬の内服と安静を保つように指導し数週間経過を見ていきますと、90%ぐらいの確率で症状は良くなっていきます。その時期にMRI検査を行うと、突出した椎間板には何も変化はないのですが、実際には内服治療を行うことにより「ミミズ腫れ」になった「坐骨神経」が元の正常な状態に戻っているのです。さらに1年以上経過すると、場合によって以前に突出した椎間板が吸収され、腰椎MRIでも画像が正常化する方もいらっしゃいます。ですから当院ではよほどの進行した症状でない限り、腰椎椎間板ヘルニアには保存的加療をお勧めしています。ただし、お小水が出ない・便も出ないといった膀胱直腸障害が出現している場合は緊急手術の適応となりますし、前述の保存的加療でいっこうに症状が改善しない方も手術が考慮されます。

腰部脊柱管狭窄症

前述の腰椎椎間板ヘルニアに比べ、高齢者に多いのが特徴です。典型的な腰部脊柱管狭窄症の症状に「間欠性跛行」というものがあります。家でトイレにいったり、入浴したりといった程度なら問題ないのですが、買い物に歩いていくと途中で足の先がしびれてきて、力も入りづらくなり、しばらく座って休んでからでないと歩行を再開できないといった症状です。これは前述の椎間板の後ろにある「脊柱管」という神経の束が通っている管が、高齢化とともに次第に細くなってしまうことが原因です。そうなると神経同士が「おしくらまんじゅう」状態となり、歩いたり、伸びをするような姿勢をとると余計に神経の「おしくらまんじゅう」が進み、うまく足に命令が伝わらなくなるのです。この状態はしばらく座って休んだり、背中を屈めると良くなるので、患者さんは知らず知らずのうちにそういった姿勢をとるようになります。
脊柱管が狭くなる原因は、加齢に伴い椎間板がつぶれ脊柱管に飛び出してくることと、脊柱管の後壁を形成する「黄色靭帯」や「椎間関節」が加齢に伴い肥厚してくることが原因です。これらの変化は腰椎MRIを撮ることにより容易に診断可能です。
軽度の間欠性跛行の状態であれば、日常生活の注意点を守っていただくことや、適切な運動、筋力トレーニング、投薬などで症状と上手く付き合っていくことは可能です。台所仕事をするだけで足の先がしびれてくるような高度の症状をお持ちの方は、手術の適応となります。昨今では、手術時の全身管理の進歩や、体に優しい手術方法の開発により、比較的高齢者でも手術が受けられる時代になってまいりました。詳細は外来にてお尋ねください。

末梢神経障害

絞扼性神経障害

末梢神経は関節などの動く部位において、神経がある程度固定されるように、骨や筋肉あるいは靭帯などで神経が筒状に囲まれて存在しています。先天的な問題あるいは関節の酷使などにより、このトンネル部分が肥厚してくると、中を通る神経に圧迫が生じ、その先の支配領域にしびれや運動麻痺が生じてきます。このような状態を絞扼性神経障害といいます。

手根管症候群

最も多くみられる絞扼性神経障害です。中年の女性で手を酷使するような仕事、例えばレジやパソコンを打つような仕事の方で、手首に存在する正中神経のトンネルが肥厚することによって生じてきます。手のひらを含め親指から薬指までのしびれが出現し、夜間に悪化することも多く、手を高く上げて振ることにより症状が改善します。進行すると感覚障害だけでなく、ペットボトルの蓋を開けずらい、物がつかみにくいといった運動神経の症状も出現してきます。

肘部管症候群

文字通り肘の関節部分で、尺骨神経という神経が絞扼されることによって生じます。手を支配する神経は3本(橈骨神経、正中神経、尺骨神経)存在しますが、このうち尺骨神経は手でいうと薬指と小指の感覚を支配しています。また手の指を開閉する筋肉等も支配していますので、進行すると指で物をつかみにい、小指が曲がって伸ばせないといった症状が出現してきます。

胸郭出口症候群

首の長いなで肩、猫背の中年女性などの方で、頚椎から腕に走行する神経と血管の束が胸郭を走行する間に絞扼を受け症状が出現します。肩や首、腕とくに小指側の前腕にかけてしびれや痛みが出現します。

糖尿病など全身疾患による末梢神経障害(ポリニューロパチー)

糖尿病では神経を栄養する微小血管が障害を受け、その進行とともに神経の栄養状態も悪化してきます。末梢神経は脊髄から1本のまま手や足先まで走行しているので、末梢にいけばいくほど栄養が行き渡らなくなります。ですから糖尿病による神経障害は指先や足裏などの末梢に強く出現するのが特徴です。
同じようなポリニューロパチーは大量の飲酒や、食事の偏りによるビタミン欠乏によっても生じます。

血行障害によるしびれ

閉塞性動脈硬化症による下肢のしびれ・痛みが代表的です。生活習慣病などの進行に伴い、下肢の動脈に動脈硬化を来たしてくると、足先に次第に血液が行き渡らなくなってきます。特に歩行時には筋肉を動かすのに大量の血液を必要とするので、長距離など血流の限界を超えて歩くと、下肢が痛くなったり休んでしまうという症状が出現します。腰部脊柱管狭窄症の欄で述べた「間欠性跛行」が出現します。腰部脊柱管狭窄症の場合には、症状が姿勢により変化してきますが、血行障害による場合には姿勢はあまり関係ありません。また下肢の血行は当院に備えてある「血圧脈波検査装置」にて判定可能です。

いずれにしましても、しびれの原因はさまざまです。頭から手足の先までみられる専門医に受診することをお勧めします。特に急激に生じたしびれに関しては脳が原因であることもあり得るので、早急に専門施設を受診しましょう。

湘南台脳神経外科クリニック

院長
落合 周太郎
(日本脳神経外科学会専門医/日本脊髄外科学会認定医/日本脳卒中学会専門医)
診療科目
脳神経外科 脳神経内科 内科 放射線科
所在地
神奈川県藤沢市湘南台2-7-15
東急ドエルアルス湘南台アネックス1F
アクセス
小田急線 相鉄線 横浜市営地下鉄
「湘南台」駅 西口徒歩2分
診療時間 日 祝
9:00〜12:30
14:30~18:00